1.遭遇








彼に初めて逢ったのは、まだ15歳の時だった。



あの日、私は事もあろうかマダム・ジリーのレッスン中に考え事をしてしまい、
物置小屋掃除という罰を言い渡された。
それはまだ三度とはいえ(無名だが)舞台を経験し、一応コーラスガールの中でのTop5である私のプライドを傷付けるには十分であった。
簡潔に言うと、私は機嫌が悪かった。
「なんでこんな事になっちゃったのよ」
着慣れない掃除用の服に身を包み、ほとんど人が来ない物置部屋で汗水垂らすなんて冗談じゃない。
自分の所為だとは分かっていながらも、掃除する気は全く起こらなかった。
どうせこのまま掃除しても気分は悪いままだ。

そう思い、私は壁にもたれ、座り込んだ。
スカートから溢れた空気が埃を舞い上がらせる。

それにしても…汚い。

部屋中埃だらけ、せっかくの大きな鏡も輝きを失い、過去の舞台の大道具と見られるものが無造作に置かれていた。
「こんなの、一人で掃除しきれるわけないじゃ…?」
立ち上がろうとしたその時、右手の触れている床に異常を感じた。

「何これ…?」
3センチ四方程のスペースだけが、ほんの少し浮いている。
周辺の埃を払ったり、指でなぞったりしているうちに、蓋のようなものだということが分かった。
なんとかして取り外すと、その中には小さな赤い押しボタンがあるではないか。
好奇心旺盛な私はためらいもなくボタンを押してしまった。

ギギッと音を立てて、私のもたれていた辺りの壁が扉のように開いた。

思わず、息を飲む。
開いた扉からは冷たい空気が流れ出ていた。

「ど…どうしよう…」
これはもしかするといけない事をしているんだろうか。
とりあえず周囲を見回すが、幸いというか来るはずもなく、部屋には一人きりだった。
思いがけない展開が続いた為、私は酷く混乱した。
このまま見なかった事に…できるかな?

そう思った矢先、鈍い音がする。
慌てて振り向くと、なんと扉が自動的に閉じようとしていた。
「わ、まってまって」
と止めたところで止まるはずもなく、ゆっくりと扉は閉じていく。
「えい!」
私は十分に考える時間もなかった為、結局好奇心に運命を任せた。



が、すぐに間違いだったと思い知らされた。


「ふえ!?」
間抜けな叫びが、何処までも暗い空間に木霊した。
焦る気持ちを抑えつつ、周りを確認するために目を凝らす。
次第に視覚が追いついてきた頃には、どうやらここが上下に続く狭い階段の踊り場であるという事が分かった。
しかし、上は屋上までとして、下は何処まで続いているというのだろうか。
見慣れぬその空間は懲りない好奇心と子供のような探究心を煽った。


カツーン、カツーン、
一歩、また一歩と踏み出し、とうとう一つ下の踊り場に着いたが、景色は全く変わらなかった。
だが、強く握った手の平には汗が滲んでいた。
頭はもはや好奇心を排除し、恐怖へとすり替えた。
「やっぱり、引き返そう」
踵を返す。

瞬間、目の前を何かが落下した。








あとがき
わあ、主人公さん好奇心旺盛ですね(笑
さて、次にはいよいよファントムがでてきます♪






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